物語
『リトル・フォレスト』を見終わると、なぜかお腹が空いて、どこかに帰りたくなる。
ヘウォンが暮らしていたあの家、セットだから撮影が終わったら壊されただろうと思っていた。
でも壊されていなかった。大邱・軍威郡牛甫面に、今もそのまま残っている。板の間も、台所も、甕置き場も、自転車まで劇中の姿のままだ。
しかも無料で、常時公開されている。2023年からは大邱市公式の「軍威シティツアー」の正式コースにも組み込まれた。
군위읍 시가지, 대구 군위 · Wikimedia Commons
花本駅前で、ヘウォンとウンスクがアイスクリームを食べていたあの雑貨店も本物だ。50年以上営業してきた店が、今もそのままそこにある。
この作品、日本の漫画が原作だけれど、2015年に公開された日本版映画の続編ではなく、まったく新しく撮られた韓国版リメイクだということも、今回初めて知った。
物語そのものについても少し触れておくと、この映画は特別な事件で動いていく話ではない。教員採用試験に落ちたヘウォンがソウル暮らしを整理して故郷に帰ってくるところから始まり、あとはただ季節が巡っていくだけだ。
その空白を埋めるのが母の存在だ。ヘウォンは、何も言わずに家を出て行った母の記憶を、料理を通して一つずつよみがえらせていく。白菜スープ、アカシアの花の天ぷら、キュウリの豆乳麺、栗の甘露煮 — どの料理にも母との記憶が重なっている。
個人的に良かったのは、この映画が母がなぜ去ったのかをすっきり説明してくれない点だ。その代わり、ヘウォンがその料理を一つずつ作りながら少しずつ理解していく過程そのものを見せてくれる。

의성역, 군위 인근 지역(2025년) · Wikimedia Commons
幼なじみのジェハ、ウンスクの話も欠かせない。映画はこの二人もそれぞれのやり方で生きていく姿を、淡々と見つめている。ヘウォン自身の選択も、結局この三人が一緒に過ごす時間の中で少しずつ形作られていく。
白菜スープからアカシアの花の天ぷらへ、キュウリの豆乳麺から栗の甘露煮へ — 季節が移り変わる速さで物語が進む映画なのに、その背景となった場所は今も季節ごとにそのまま花を咲かせている。
柿を収穫するシーンに出てくる石垣の村も実在する。軍威のハンバム村で、映画に出てきたあの石垣が今もそのまま残っている。
ヘウォンが最終的に都市に戻るのか、故郷に完全に残るのかは、ここではネタバレしないでおく。ただ確かなのは、その選択に至るまでヘウォンが過ごした四季が、今実際に軍威に行けば、まったく同じように巡っているということだ。
だからこの映画を見て大邱、正確には軍威まで足を延ばすなら、写真だけ撮って帰らずに、花本駅前の店でアイスクリームをひとつ買ってみてほしい。
この場面の実際の場所
代表ロケ地TOP5
ヘウォンの家(大邱広域市軍威郡于輔面)
公式・直接
花本駅(慶尚北道軍威郡山城面)
公式・直接
역전상회 (화본역 앞, 군위군 산성면)
公式・直接
한밤마을 돌담길 (군위군 부계면)
公式・直接
일연공원 (군위군 고로면)
公式・直接
登場人物とキャスト(9名中8名)
人物の関係や物語の詳細は地図画面で確認できます。
リトル・フォレスト(韓国版)のすべての場所(11か所)
ヘウォンの家(大邱広域市軍威郡于輔面)
もともと空き家だった農家を1年間セットとして使用した場所。撮影終了後も取り壊されず、板の間・台所・暖炉・畑・自転車など劇中の姿をそのまま保存し、無料で常設公開されている。2023年に軍威郡が大邱広域市へ編入されて以降、公式「軍威シティツアー」の正式コースに含まれている。
花本駅(慶尚北道軍威郡山城面)
1936年開通の中央線の古い駅。劇中ジェハが元恋人を見送るプラットホームのシーンが撮影された。
역전상회 (화본역 앞, 군위군 산성면)
A general store in front of Hwabon Station that has been operating for over 50 years — the scene of Hye-won and Eun-sook eating ice cream and old-fashioned snacks was filmed here. Still open for business today, with a banner marking it as a filming location.
한밤마을 돌담길 (군위군 부계면)
A traditional stone-walled village where the scene of Hye-won picking persimmons was filmed. Known for its well-preserved old stone walls.
일연공원 (군위군 고로면)
A park commemorating Buddhist monk Il-yeon, author of the Samguk Yusa — used as a scenic backdrop in the film.
의흥전통시장 (군위군 의흥면)
A real traditional market where the film's marketplace scenes were shot.
조문국사적지 (경북 의성군 금성면)
A historic site with ancient Jomunguk-kingdom tombs, also known for its canola fields — used as a spring-scene backdrop in the film.
의성 사곡면 산수유마을 (경북 의성군 사곡면)
Where the scene of Hye-won taking a bicycle ride was filmed. A village famous for its yellow cornelian cherry blossoms in early spring.
의성 사곡면 오상리 마늘밭 (경북 의성군 사곡면)
A spring-scene filming location revealed to the press in May 2017. One of the actual growing fields for Uiseong garlic, a nationally renowned brand.
군위전통시장 (군위군 군위읍)
A real traditional market included as the lunch stop on the Gunwi City Tour — a good place to try local food alongside a visit to Hye-won's House.
군위 대추 산지 일대 (군위군 전역)
Gunwi is one of Korea's top jujube-growing regions, with an annual jujube festival. Not directly referenced in the film, but a genuine local specialty of the area where Hye-won's House is located.